努力しない生き方 (集英社新書)

雀鬼。歌舞伎町で無敗の男。以前、爆笑問題の番組で麻雀牌をつむ桜井章一を観た。つんだ牌をひっくり返すとまるで手品のように役が出来ている。この本は、桜井章一が上手に生きるにはどうすればいいかを教えてくれる。その考え方は独特で貫禄がある。読み進めるたび、なるほどと感心してしまう。

努力しない、持たない、得ない・・・それぞれの章が 〜ない というタイトルで始まるのがこの本の特徴だ。例えば、満たさないとか、覚えないと言われるとおかしな考え方だと感じてしまうが、桜井章一からすれば、そう思ってしまう方が間違っている。その語りが魅力的なのは、その発想に手ぶらでひょうひょうと歩く男の後ろ姿から溢れる頼もしさを感じるからだ。頑張らなくてもいい、絶対なんて考えなくていい、そう言われた瞬間にホッと肩の力が抜けて楽になる。その状態こそ人間の本来の姿で、リラックスしている時こそ人間は強い。この本を僕はそう理解した。

「勝つためだけの勝負はいくら勝っても人に本当の満足感は与えない。負けても相手のことを思いやったり、きれいな心持ちで精一杯勝負できれば、納得感がある。」

こんな事を言われると、今まで自分と他人を比べて生きてきたことが馬鹿らしくなる。

作品を制作する身として、一番大切したい言葉は、「つくらない」。いいものは、いろいろやっていると自然に生まれるものだ。「つくる」のではなく「生む」という感覚を持つ。こんな事を考えながら美術作品を制作している人間が世界に何人いるだろうか。

雀鬼という形容詞はどこか鬼気迫るものを感じさせるが、桜井章一は暖かくて優しい人に違いない。この本に書かれている文章がそれを物語っている。本物の男の生きる所作。

【新品】【本】努力しない生き方 桜井章一/著

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